2001年10・11合併号
発行こぶし編集部
第159・160号
『PTSD』藤田 毅

・合併号
先月はこぶし便りを発行できずに申し訳ありませんでした。もろもろの事情が重なり・・・、どうかご容赦を。というわけで、今月号は合併号となりました。しかし、合併号だからといって何か特別企画でもあるわけでなく、いつも通りのこぶし便りとなります。
これまたご勘弁を。(^_^;)

・秋ですね、というより初冬か
最近はすっかり冷え込んできましたね。
秋を通り越して初冬の様相です。このところ、講演などで郊外へ出かけることが多いのですが、段々と紅葉を楽しめるところが少なくなってきているように感じています。
宅地開発などで伐採が進んでいるためか、寂しい感じもします。 こうして寒くなってくると、季節の変わり目で日中の眠気が異様に増したり、冬季うつ病とまでいかなくても抑うつ的な気分になったり、心身ともに変調をきたすようになります。
今までと違う状態になっていると感じたなら、こうした季節の変化によるものかもしれません。

・米国テロ事件
皆さんご存知のようにアメリカのテロ事件がありました。報道などで種々の情報が、それこそ垂れ流しのように私たちの生活に入り込んできて、好むと好まざるとにかかわらず色々なことを考えさせられました。中には、私たちの日常生活にもいつテロの恐怖が訪れるかわからないと戦々恐々とされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。 集団心理学的な解説は新聞などで目にされているかと思いますが、これから問題になってくるのは、テロ事件に遭遇して(最近の炭疽菌事件も同様です)幸運にも一命を取り留めることができた方々の心理的外傷でしょう。心に強い不安と恐怖を刻まれたのですから、何らかの障害が残って当然のことと思われます。もうお分かりの方もいらっしゃるでしょうが、このような障害をPTSDといいます。

・PTSD
(心的外傷後ストレス障害)
PTSDという言葉を聞かれた方も少なくないのではないかと思いますが、近年では地下鉄サリン事件や神戸の地震などの後、新聞紙上などで目にされたのではないでしょうか。最初はベトナム戦争後のアメリカ兵達が、戦場での恐怖から長年解放されないことから、定義されたものです。
PTSDというのは「Post-traumatic stress disorder」の略で、邦語では心的外傷後ストレス障害といいます。
今回はこの疾患について整理してみましょう。
では、例によってこの病気の定義を国際疾患分類のICD―10を用いてご紹介します。(ICD―10はこぶし便りでも何度かご紹介しましたね)

A.並外れた脅威や破局的な性質の(すごい表現ですね)ストレスいっぱいの出来事や状況にさらされて、ほとんどの人が広範囲の苦痛と感じるような状態に追い込まれている。

B.突然やってくる「フラッシュバック」、生々しい記憶、繰り返し見る夢、あるいは原因になった状況に近い状態にさらされた時の苦痛によって、その時の記憶がしつこく蘇ってきたり、「再体験」したりする。

C.その原因や関連する状況から、現実に何とか逃げようとする。または知らないうちに逃げるような行動をとっている。しかし、そのような傾向は以前に見られなかった。

D.次の①か②のうち、いずれかが存在すること
①そのストレスにさらされた時期に関して、一部分でも全てでも思い出せなくなっている。
②次の症状のうち2つは存在すること。
a入眠困難、睡眠困難
b焦燥感、怒り
c集中困難
d短慮
e過度の驚愕反応
ただし、このうちB・C・Dの全てがその原因の6ヶ月以内に起こっていることが条件です。

・何やら難しいというか、わかりづらい表現がありますね。よく読んでいただけると何となくわかるかと思うのですが、要は、ものすごく大変な体験をして、その時のことを"突然"思い出したり、知らず知らずそれを避けていたり、その時の記憶が欠けていたりするという状況ですね。 最近はトラウマブームととでもいうべきか、何か辛いことやショックなことがあると、トラウマになったと表現する人が多いようです。トラウマというのは心的外傷のことを言いますが、PTSDなどは、単に辛い出来事があったから発生するというような単純なものではないことがお分かりいただけたでしょうか。上記のBやCやDといったことが揃って現れていることが必要なのです。

・治療の行方
通院中の方にもPTSDと診断されている方がいらっしゃいますが、これを克服するのがいかに大変かということは治療中の方はよくご存知のことでしょう。そのためには長い時間と僅かずつでも積み重ねていく安心感が必要です。心の奥にしまい込んだままになっている恐怖や不安をどう処理していくか・・・難しい対応が要求されます。 治療についての詳細はここでは省きますが、決して簡単な障害ではありません。ですが、きちんと治っていくことも可能ですので、治療中の方は根気よく取り組んでいきましょう。諦めてはいけませんよ。 ・結語
色々な病気をここでご紹介していますが、リクエストがありましたらお知らせください。そのうち取り上げられるかも?(約束しないところがズルイですね(笑))

~読者の広場~ 『羊とOLと眠れない夜のお話』
春暁眠子
『民間療法』というものは、おおよそ信じない性質である。大体にして、きのこや変な名前の薬草を食べただけで鬱がきれいさっぱり治るんならこぶしのお医者サンはもっと楽なはずで、患者も35分地下鉄に揺られる必要もなくなるはずだ。そんな私でもたった一つ信じるものがある。
アロマテラピーだ。
ことの起こりは去年の今ごろ。すっかり不眠症になってしまい、家族にも散々心配をかけた。そのころ、購入したのがこぶしのカウンターで販売している『こぶしオイル』。もともと精神の不調をハーブティーを使って紛らわしていたから、アロマオイルに抵抗はなかった。実はその頃、自分の好きな『天使の卵』シリーズのアロマランプを買ったので、早く使いたかったという事情もあったのだけど(苦笑)。 アロマオイルは、効いた。不眠症が少しずつよくなって、薬も軽くなっていった。同じ部屋の母が、熟睡しすぎて何度か仕事に遅刻しかけるという副作用(?)はあったけど、部屋の消臭効果もあるようだ。最近またプチ不眠なのだけど、思いっきりリラックスしたいときは必ずこぶしオイル。いつのまにか種類も増えて、今は『ゆったり』『ぐっすり』『すっきり』と、それぞれの効果にあった名前がついている。私の愛用は『ゆったり』で、もう2瓶目になる。でも、アロマテラピーに慣れてない人なら、『ぐっすり』から始めるのがおすすめ。においがあるかないか位のカンジだから、それほど邪魔に感じない。 最近はアロマグッズも沢山あって、かなりお手軽なものになった。タイトルの羊というのは、私が千歳空港で買ったアロマシープのこと。これは小さなテラコッタの羊で、効能別に名前がついている(基本の香りはラベンダー)。私は仕事中にストレスで爆発しないように、イライラを静める『ポカポカ』という羊を机の上で飼育(?)していた。その他にはハーブティー、アロマキャンドル、仕事の時には好きな香水。私の生活から『香り』ははずせない。
秋の夜長は不眠持ちの人間には地獄のような苦しみ。それをほんの少し楽にするために、薬以外のものを活用するのも悪くない。でも、アロマキャンドルからの火事が増えているそうなので、寝るときにはアロマランプにしてくださいね。 ランプは触ると熱いときがあるので、くれぐれも寝てる間に蹴飛ばしたりしないようにご注意を。

〈食のシリーズ27〉
『狂牛病について』
ネコ吉
短い文章で的確に伝わるかが心配な話題ですが、ちょっと避けては通れない話です。 なんせ私たちは安心して食べ物を口にしなければならないのですから。 さて、まず「狂牛病」と一般には言われているのですが「牛海綿状脳症(BSE)」 と表記しなくてはならない。だって差別用語のような気がしない?ですから以下記述はBSEとします。このBSE、異常なプリオンによって引き起こされる。プリオンは脳に多く存在する糖蛋白だ。正常なプリオンは私たちだってもちろん持っている。 ただ、食べたりして異常なプリオンが腸管に取り込まれてしまい、それがリンパ節、脳へと流れてくると正常なプリオンが異常なプリオンに反応して構造が変化してしまうと問題だ。正常なプリオンは蛋白分解酵素で分解されるけど、異常なものは分解されずに蓄積し、神経細胞に障害を与える。脳が冒されてスポンジ状になってしまう。
よくTVに写されるのは末期の症状。イギリスの映像である。全体の98%がイギリ スでBSEが発症。アイルランド、ポルトガル、スイス、フランス、EC諸国で確認されている。1996年にまで英国でBSEとして判断し処理された牛は75万にのぼる。 さてこのBSE、人間に稀に感染してしまう事もあることが分かっている。変異型クロイツフェルト・ヤコブ病?CJD以下表記統一)の10%がそうではないかと言われてる。現在確認数75名。CJDひっくるめて100万人に一人の割合の発症率。要するに稀の稀。 今回の騒ぎ、日本がかなり甘い考えで問題を見ていたと言える。まるでBSEが人間に感染しないだろうと甘く考え、対策を遅らせたイギリスの二の舞を演じている。 政治・政財界からの圧力に屈した部分もあったのだ。そしてリサイクルとはいえ草食動物に動物の死体・くず肉・骨を処理した物を与え、家畜に感染を広めたのは人間なのだ。狂牛病騒ぎの後も暢気に肉骨粉に対して規制もせず輸入までして飼料として家畜に与え続けたのは、日本の農水省の怠慢である。 BSEに感染した肉を店頭で見ることはまず無いだろうと思われる。どちらかと言えば、騒ぐより先に煙草を止めた方が良い。確実に発ガン性物質を含んでいるのだから。でも、稀だとはいえ、学術研究者や政府をとにかくせっついて、完全な対策を練らないと広がって行くばかりだ。この病気は一頭の牛(または羊)から始まったと考えられ、人の手によって広げられたのだから。被害者は牛であろう。 今回は難しい内容になったけど混乱しないで。安心、だけどちょっと心配はして頂きたいのだ。まだまだ分からない事が多すぎる問題なのである。

〈食のシリーズ28〉
『チーズがキライと言う方へ』
ネコ吉
私はどっちかと言うと「チーズが好き」で、普通のプロセスチーズの材料になるゴーダーチーズから青カビの生えたブルーチーズまで、クラッカーにのっけたり、そのまま食べたりして楽しむのですが、チーズが苦手な人は料理の中に入れてしまうと案外美味しく頂けたりするものです。(牛乳やチーズがそのままはダメでも、グラタンやシチューは好きだったりしませんか?) チーズのオススメ・メニューは和食に使ってしまうことです。クリームチーズを一口大にカットして、玉葱のスライス、かつお節、醤油をかけて豆腐っぽく食べてしまうのは、けっこう有名な(?)お話です。チーズおにぎりなんてコンビニで見かけたりしますよね。プロセス・チーズを細かくカットして、おかか醤油と一緒にご飯に混ぜ込んじゃうと、けっこう美味しい栄養も取れる混ぜご飯ができたりします。お寿司の細巻きの具をチーズにしてしまうと案外イケルものですよ。和食ではないかもしれませんが、フェタというオリーブオイルに漬かったチーズをサラダにかけて、そこにノン・オイルの青ジソをかけて食べるのは食欲が無いときの私のメニューです?おやつとしてはドライフルーツのイチジクにクリームチーズをサンドして食べるのが美味しいなあと思います。夜食にはお茶漬けに溶けるチーズを入れたり。結局は様々な料理にあえて加えてみるチャレンジ精神(!?)かもしれませんね。
スライス・チーズ、一枚(20g)50kcal。126mgのカルシウムが含まれてます。日本人が不足しがちな栄養素が補えるのです。
嫌いな人が無理にチーズ好きになる必要性はないのですが、様々な種類のチーズが身近なお店で購入できる時代になったので、食べられるチーズを探したり、食べられる料理法を見つけたりしても良いのではないでしょうか。